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【警告】2019年台風の教訓|なぜ修理に「半年待ち」の行列ができたのか?

業者選びの真実と警告

2019年9月、千葉県は「戦場」でした。
最大瞬間風速57.5m/sの暴風が去った朝、私たちが目にしたのは、無惨にめくれ上がった屋根と、街全体を覆い尽くすブルーシートの海でした。

しかし、真の地獄はその後に訪れました。
「電話がつながらない」「来ても半年待ちと言われる」「紹介サイトが機能しない」。
なぜ、あの日千葉県で「修理難民」が多発したのか。一級建築士として現場を指揮した私が、隠された業界の構造欠陥と、今もあなたを狙うリスクについて警告します。

【この記事の要約】

2019年台風15号・19号が残した「ブルーシートの街」という悪夢

千葉県にお住まいの皆様、そしてこれから千葉で家を守ろうとお考えの方へ。
2019年9月9日未明に上陸した台風15号(令和元年房総半島台風)は、私たちの想像を遥かに超える爪痕を残しました。

【公式データ】台風15号の被害規模

最大瞬間風速 57.5m/s (千葉市観測)
走行中のトラックが横転するレベル
住宅被害 64,000棟超 全壊・半壊・一部損壊の合計
(内閣府・千葉県報告より)
停電規模 640,000 復旧まで最長19日間
情報の物理的遮断

「風台風」と「長期停電」の複合災害

この台風の特徴は、雨よりも圧倒的な「風」でした。
瓦が飛び、スレートが剥がれ、棟板金(屋根の頂上の金属)が飴細工のように曲げられました。さらに深刻だったのが、倒木による電柱の倒壊です。
最大約64万戸という未曾有の停電は、最長で19日間も続きました。

想像してみてください。屋根に穴が空いているのに、スマホの充電が切れ、Wi-Fiも繋がらない。
「どの業者が営業しているのか」「どこに電話すればいいのか」という情報そのものが遮断されたのです。
9月の残暑厳しい中、エアコンも使えず、情報の命綱も断たれた被災者たちは、ただ呆然と空を見上げるしかありませんでした。

村上の現場メモ:追い打ちをかけた「台風19号」

悪夢は終わりませんでした。10月には台風19号(東日本台風)が追い打ちをかけました。
15号で傷ついた屋根に必死で張ったブルーシートが、19号の暴風で再び吹き飛ばされ、豪雨が室内に降り注ぐ。
「もう心が折れた」と涙を流す高齢のご夫婦の姿を、私は一生忘れることができません。

なぜ優良業者は来なかったのか?「供給の蒸発」の正体

「近所の工務店に電話してもつながらない」「やっとつながっても『半年待ち』と言われた」。
なぜ、頼りにしていた地元の優良業者は来てくれなかったのでしょうか。彼らが怠慢だったわけでも、意地悪をしたわけでもありません。
物理的な限界、すなわち「キャパシティ・オーバー(能力超過)」に陥っていたのです。

数日で300件の着信…地元業者の悲鳴

地元の誠実な板金業者や工務店の多くは、職人数名で回している小規模経営です。
災害直後、彼らの電話は鳴り止まず、わずか数日で300件〜500件もの修理依頼が積み上がりました。
しかし、1日にしっかりと調査・応急処置ができるのは、せいぜい3〜4件が限界です。

STEP 1
既存客(OB)からのSOSが殺到
STEP 2
職人のスケジュールが数ヶ月先まで埋まる
STEP 3
新規の依頼は「半年待ち」か「断る」しかない

これが、災害時に地域全体の修理能力が一瞬で枯渇する「供給の蒸発」という現象です。
さらに、建築業界全体の高齢化(職人の平均年齢50歳超)が拍車をかけました。屋根に登れる若手職人の絶対数が足りないため、いくら見積もりを作っても、現場を動かす人間がいなかったのです。

マッチングサイト・紹介サイトが災害時に無力だった理由

地元の業者がダメなら、ネットで探そう。
多くの人がスマホのわずかな充電を頼りに「千葉 屋根修理」と検索し、上位に表示される「一括見積もりサイト」や「業者紹介サービス」に登録しました。
しかし、そこでも解決策は見つかりませんでした。

紹介サイトの致命的な弱点

マッチングサイトは、あくまで「情報を仲介して手数料を取る」ビジネスモデルであり、
自社でヘルメットを被って屋根に登る「職人」を一人も抱えていません。

平時であれば便利なシステムですが、災害時は登録している加盟店(下請け施工店)自体が被災したり、手一杯でパンクしています。
いくらサイト側がきれいな広告で集客しても、紹介できる「受け皿」が存在しないのです。

実際、大手建設プラットフォームが全国から職人を募って支援に入りましたが、数万件の被害に対し、施工できたのはニーズの約25%にとどまったというデータもあります。
ITの力で情報はつながっても、物理的な労働力(職人)を即座に増やすことはできないという限界が露呈しました。

火事場泥棒のような「悪徳業者」の手口と二次被害

正規の業者が動けない「半年間の空白」を狙って、県外からハイエナのように群がったのが悪徳業者です。
彼らは被災者の「早く直したい」という焦りにつけ込み、以下のような手口で二次被害をもたらしました。

  • 手口 1
    「無料で点検します」という訪問販売
    親切を装って屋根に上がり、見えないところで瓦を割ったり、「このままだと雨漏りする」と嘘の報告をして契約を迫る。
  • 手口 2
    高額なブルーシート養生ビジネス
    「とりあえずシートだけ張ってあげる」と言い、養生だけで数万円〜数十万円を請求。しかも張り方が雑で、すぐに飛んでしまう。
  • 手口 3
    素人同然の「にわか職人」
    高額な日当につられて集まった技術のない人間が施工。屋根材を踏み割って被害を拡大させたり、転落事故を起こすケースも多発した。

実際、千葉県内では屋根修理中の転落事故が101件発生し、2名の方が亡くなっています(千葉労働局調べ)。
「すぐにやれます」という言葉の裏には、こうした危険な実態が隠されていたのです。

同じ悲劇を繰り返さないために

2019年の教訓は明確です。
「災害時には、紹介サイトも地元の小規模業者も機能不全に陥る」ということ。
そして、その隙間を埋めるのは悪徳業者であるということ。

このブログでは、こうした「業界の不都合な真実」を包み隠さず公開していきます。
次回は、多くの人が陥りがちな「ネット検索とランキングサイトの罠」について、さらに深く切り込みます。あなたの家の運命を、広告費で順位が決まるランキングに委ねてはいけません。

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